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航空機・宇宙産業で高付加価値化を目指す切削加工会社
- ㈱ウラノ 代表取締役小林社長

埼玉県と長崎県に工場をもつ株式会社ウラノは、合計約100 台のマシニングセンターを所有し、24 時間359 日稼動で納期対応を確立しています。5 軸加工を主体に航空宇宙機器、原子力関連装置、液晶半導体関連装置等の複雑形状物加工を得意としています。航空機においては、機体・エンジンの難削材(インコネル、チタン)に特化し、国際宇宙ステーション、H2 ロケットなどの国家的プロジェクトにもウラノの加工部品が採用されています。

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長崎工場の外観

─ 航空機という最先端の分野の部品加工を手掛けられている御社ですが、まず創業の経緯について教えてください。

 1950 年4月に祖父が、埼玉県本庄市上町で浦野鉄工所を立ち上げたのが始まりです。祖母との結婚で小林家へ養子に入った祖父が鉄工所を創業するに当たり、実家の浦野家が出資をしてくれたことから、感謝の意を示す意味で「浦野」の名前を社名に掲げたそうです。

─ そうしたなかで御社にとってエポックメーキングな出来事になったのが、同業他社に先駆けて「5軸マシニングセンター」を導入したことだったのですね。

 1988 年に埼玉第3工場を立ち上げる際、当時1台当たり1億5,000 万円の大型のもの4台と、同1億円の中型のもの1台の5軸マシニングセンターを初めて購入しました。「上下」「左右」「前後」という3軸の動きに、削る金属部材を置く台の「回転」と「傾斜」という2軸の動きが加わり、複雑な形状の部品を100 分の1㎜単位の高い精度で切削加工することが可能になる数値制御の工作機械です。当時、社長であった父にしてみたら大英断だったと思います。すぐに最新鋭の工作機械を揃える切削加工会社として評判になり、ある業界誌の取材を受けました。 すると、その記事を読んだ国内の航空機メーカーから「機体部品の加工をやってみないか」との声がかかり、それが航空機の分野へ足を踏み入れるきっかけとなったのです。そのメーカーから切削加工に必要なプログラミングなどの指導を受け、1990 年からボーイング社のB757 型機の部品加工が始まります。

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複雑形状の切削加工を得意としている

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図面や3Dモデルより治工具を設計/製作している

─ ボーイング社向けの部品加工が増えていくなか、2006年に長崎工場を立ち上げられました。何かご縁のある地だったのですか。

 そういうことではなく、お客様が近くにいたからということでもありません。若手労働者の県外流出に悩んでいた長崎県は、首都圏で企業誘致の活動を積極的に行っていました。その一環で長崎県振興財団の方が、プレゼンのため何度も父を訪ねてこられました。そして、自然の恵みに富み、風光明媚な地であることを知り、現地の視察に赴いた父は一目見ただけで環境が気に入って、新工場建設を決めたのです。
 もちろん、会社経営の面での大きな理由もあります。既に当時から埼玉県内では若手の優秀な人材を確保するのが難しく、求人しやすい地に新工場を建設する必要に迫られていました。その狙いは見事に的中し、埼玉の本社工場と同じ賃金体系にしたこともあり、優秀な若い人材がすぐに集まりました。現在、全社員約460 人の内約220 人が長崎工場の社員ですが、一時その平均年齢は26 歳で、いまでも30 歳前後をキープする、ヤル気に満ち溢れた若手中心の現場になっています。

─ 長崎工場はスタート当初から航空機の部品加工をメインとしていたそうですね。

 767型機の後継機で当時開発中の787型機の大きな特徴は、大型ジェット機並みの航続距離を可能としつつ、他の機よりも低燃費を実現していることでした。そのため、機体に軽くて強度の高い複合材であるカーボンを採用します。しかし、カーボンは構造材として通常使用されていたアルミと耐雷性の面で相性が悪いという欠点がありました。 そこで積極的に活用されるようになったのが、硬度が高くてカーボンとの相性もいいチタンでした。
そしてチタンが金属部材として採用される割合は、777型機の7%に対して787型機は倍の14%にアップすることになりました。それを受けて「チタンはアルミよりも削りにくい難削材であるものの、将来に亘って大きなビジネスになる」と考えた父は、新設する長崎工場を航空機のチタン部材に特化した工場にすることを決断したのです。 もちろん、技術面での自信もありました。発電用タービンのブレードの部品加工を行うなかで、同業他社が敬遠する難削材であるステンレスの切削を既に手掛けており、「こうした工程を組んで、こんな刃物や治具を使えば、低コストでスピーディーに納品できる」という当たりをつけられたのです。また、他社よりも格段に安い見積書も提出できて、2012年の787型機のチタン材大型部品加工の日本一の受注獲得へつながっていきました。

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工場内の風景

保有設備

─ そうしたなか、宇宙分野での部品加工も始まっていますね。

 はい、1995年に宇宙往還機「HOPE」を開発するための小型実験機「HYFLEX」の外壁(セラミック)加工を任され、1997年には宇宙ステーション「きぼう」の部品加工にも携わりました。さらに、1999年からは「HⅡロケット」の部品製造にも参入しています。

─ 航空機分野の今後の展望について教えてください。

 航空機関係では、より高い精度や品質が求められて、コストダウン競争に巻き込まれにくいエンジン関係に注力していく考えでおります。初めてエンジン関係に携わったのは、2008年のエアバス社のA350型機向けのロールス・ロイス社製エンジンでした。そして、いま照準を合わせているのがプラット・アンド・ホイットニー社製の「PW1100G」のエンジンです。
 これまでジェットエンジンに空気を送り込むファンの羽根は、鋳物による鍛造品が使われてきました。しかし、PW1100Gの羽根は形状が特殊で鍛造品では要求された水準に達することができず、より精密な加工が可能な切削加工にチャンスが回ってきました。試作から量産まで3年ほどかかりましたが、いまでは長崎工場で12 台のマシニングセンターを
使い、月に8,000 枚の羽根を加工しています。そのPW 1100 G向けについては、自動化や関連分野の取り込みで、さらなる高付加価値化を図っていきます。マシニングセンター6台につき1台のロボットを導入し、金属部材の脱着から形状検査、後工程の非破壊検査までの運搬をすべて任せて、人手がかからないようにします。また、形状検査装置もドイツ製の最新のものに入れ替えて、検査に要する時間を従来の5 分の1に短縮しました。 さらに、完成した羽根を取り付ける「リング」と呼ばれる部品の切削加工の取り込みを1年計画で進めています。最終的には、そのリングに羽根を接着する組み立てまで取り込んでいきたいと考えています。そうやって川上から川下まで請け負うことで当社は高付加価値化を、一方でお客様はリードタイムの短縮を実現し、ウィン‐ ウィンの関係を構築していくのです。また、国際的な商談会に積極的に参加して、海外の航空機メーカーとの直接取引の開拓も進めていく考えです。

─ 最後に御社の将来像について教えてください。

 いままでお話ししてきましたように、世界と競争しても勝てるウラノの技術をブラッシュアップし続ける会社であることに変わりはありません。そのベースとなるのが、「よりよいものを他社よりも安く、そして早くお客様にお届けする」という取り組みです。それには社是が説く「自立共存」の精神に全社員が立ち返り、一歩一歩前進していくことがますます重要になってきます。いまある航空機と半導体関連の2つの事業の領域拡大と高付加価値化を加速していく考えでおります。

設立
1963年11月
日本語版ロゴ.png
本社・埼玉工場
〒369-0306 埼玉県児玉郡上里町大字七本3563
長崎工場
〒859-3922 長崎県東彼杵郡東彼杵町八反田57-27
群馬工場
〒372-0815 群馬県伊勢崎市東上之宮町1631-2
企業URL
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